物件データ
家づくりの経緯
アパート経営をしているH様から新築物件を依頼された際の要望は、四角い箱型のありきたりなものにしたくないということ。一目見て「この物件に住みたい!」と入居者に選んでもらえるようなアパートを建てたいというのです。
それを受けて小栗工務店が提案したのが、サンフランシスコの「ペインテッド・レディース」を思わせるようなデザイン。1850から1900年代初め頃にかけて建築されたビクトリアンハウスのひとつで、テレビドラマ「フルハウス」で有名になったパステル調の建物群です。
東向きに並んだ5戸はすべてメゾネットタイプで、1戸ずつ外壁の色を変えたうえでドアとポストの色でアクセントをつけました。さらに窓の形を変えることで、リズミカルで軽やかな印象に。近隣はもちろん、県下でもなかなかみつけられないデザインです。
間取りは、1階にLDKと水回りを配置し2階に2部屋の洋室がある、カップルや若いファミリーに人気のタイプにしました。1階は隣家と壁を接することなく、2階の一部だけがつながっている構造にしたのは、生活音が気にならないようにという配慮です。
施工の際にこだわった点
個人宅とアパートの違いは、収益性を考えなければいけないところです。そのためにはイニシャルコストとメンテナンスコストのバランスを考えなければいけません。
ビクトリアンハウスがモチーフになっているこの建物の場合、ラップサイディングにすることは決まっていましたが、将来のメンテナンスのしやすさを考えて、材質は樹脂を採用しました。
というのも、一般的に住宅の外壁に用いられることの多い窯業サイディングでは、10年に一度程度、塗料の塗り直しやシーリングの打ち直しが必要になりますが、入居者がいるタイミングで塗り直しをするのは難しいものがあります。かといって塗り直しをせずにいると、外壁がだんだんくすんで薄汚れた印象になり、入居率の低下につながりかねません。
その点、樹脂サイディングなら30年間はほぼノーメンテナンスでよく、変色もほとんどないため、アパートの外壁にはとても適しています。イニシャルコストは少し高めにはなってしまうものの、トータルで考えれば十分収益は見込めると判断されたそうです。
さらに、鮮やかな色のバリエーションがある樹脂サイディングは、今回のデザインにぴったり。同じ製品では色が揃わず、違うシリーズから採用しましたが、色味のトーンを合わせたことで、違和感ない仕上がりとなりました。
メンテナンスがしやすい玄関回りだけはレンガ調の窯業サイディングに。カラーの樹脂サイディングは建物全面のみで、残り3方はすべて同色(ロイヤルよこ張りのリネン)にすることで、統一感を出しつつコストも抑えています。
お客様の声
デザインパースではすんなりOKしたH様でしたが、早く完成形が見たくて、実際にカラーサイディングが張られるのを今か今かと楽しみに待っていたそうです。
また、三角屋根が5つ並んだユニークな建物は近所でも評判になっていたようで、いったい何が建つのだろうと見に来た人もいたのだとか。
完成は5月と、引っ越しシーズンからは少しずれましたが、それでも募集開始後立て続けに3世帯の入居が決まり、スタートは上々。どの世帯も入居の理由のひとつに建物のデザインを挙げていて、H様の考えが見事にハマった格好です。残り2戸もすぐに埋まりそうです。
この家を建てたのは
小栗工務店では、欧米住宅のデザインを日本サイズにダウンサイジングして提案しています。ご予算に合わせてどこまでもアメリカの住宅に近づけていくことができます。なるべく家以外のものに経費をかけないメンテナンスフリーの家を推進し、塗り替え、貼り替えのいらない外壁や、タイルや樹脂のサイディングなども北米から優れた素材を研究し取り寄せています。こういった試みをしている工務店は岐阜県でも数えるほどしかありません。