近年、環境問題への意識の高まりとともに、プラスチック製品への向き合い方を見直そうという流れが加速しています。ニュースではレジ袋やストローといった生活に身近なものが取り上げられる機会が多いものの、住宅建材も例外ではありません。では、プラスチック製品のひとつでもある、樹脂サイディングの環境への影響はどれくらいのものなのでしょうか。
少ない石油資源で製造可能な塩化ビニル樹脂
樹脂サイディングは塩化ビニル樹脂から作られています。塩化ビニル樹脂とはポリエチレンやポリプロピレン、ポリスチレン、PETなどと同じプラスチックの仲間です。とはいえ、他のプラスチックが100%石油から作られるのに比べて、塩化ビニル樹脂の原料は、40%が石油で、残りの60%は天然塩です。つまり、塩化ビニル樹脂は他のプラスチック製品に比べて少ない石油資源で製造することが可能なのです。その結果、製造過程におけるCO2の発生量も少なくて済みます。
また、プラスチックには錆びない、腐らないという特徴がありますが、塩化ビニル樹脂はさらに長寿命で燃えにくいのがメリットです。塩化ビニル樹脂は、その特徴を生かして、上下水道のパイプや電線被覆材、雨どいや窓枠などの建具、農業用のビニールハウスなどの農業資材、医療用具などに使われています。
外装材として見た場合、長く使えることはすなわち、廃棄される量が少ないということになります。樹脂サイディングは耐久性がよく、ひいては家屋を長持ちさせることになります。ちなみに、樹脂サイディングは他のサイディングに比べて端材がきわめて少ないのも特長で、この点でも環境にとって優れた外装材であると言えます。
リサイクルしやすく、地球環境への負荷が小さい
また、リサイクルしやすいことも地球環境にとって負担をかけないことになります。
プラスチック製品のリサイクルには大きく分けて3つの方法があります。
- マテリアルリサイクル
再生材料として再びプラスチック製品にする - ケミカルリサイクル
科学的処理を行って製品原料に戻す - サーマルリサイクル
燃やした時に発生するエネルギーを利用する
塩化ビニル樹脂はどの方法でもリサイクルが可能ですが、特にマテリアルリサイクルでは、他のプラスチックと比べて最も進んでいます。というのも、一般的なプラスチックはリサイクルの際に品質が劣化しやすいのに対して、塩化ビニル樹脂は再生しても特性がほとんど低下しないからです。
塩ビ工業・環境協会が行った実験によれば、15年間使用した樹脂サイディングを粉砕し、リサイクル品として成形された製品と未使用品を比べたところ、強度にほとんど遜色のないことが確認されました。
外壁材以外では、塩化ビニル樹脂の代表的用途である農業用ビニールハウスは使用後には床材やシートに、また、使用後のパイプは再びパイプにリサイクルされるなど、多くの塩化ビニル樹脂製品がリサイクルされています。
焼却時のダイオキシンは心配不要
焼却される際のダイオキシンを心配する人もいるかもしれません。どれだけリサイクルしやすい性質を持っていても、いつかは廃棄する製品も出てくるからです。しかし、それは杞憂です。
ダイオキシンには構成元素として、塩素が含まれます。塩化ビニル樹脂にも塩素が含まれるため、塩化ビニル樹脂がダイオキシン汚染の犯人ではないかと見られていた時期もあります。しかし、さまざまな研究により、焼却時のダイオキシンの発生は、燃焼させるものによるのではなく、燃焼条件に依存することが分かっています。現在は焼却炉の改良により、ダイオキシン類の生成量は劇的に削減されました。2015年時点で大気中の濃度(平均値)は環境基準値の約1/29となっているので、ほとんど心配ないと考えていいでしょう。